Profile
三浦 裕美
10歳よりサクソフォンを始める。中、高校では吹奏楽部を経て、くらしき作陽大学に入学。クラシックを冨岡和男、長瀬敏和、大城正司、各氏に師事。同大学 卒業演奏会、新人演奏会など、数々の演奏会に出演。卒業後、サクソフォン講師としてクラシック以外の音楽にふれる機会が増えるとともに、徐々にJazzに 興味を持ち、独学で学び始める。2004年、渡米。New School University に入学。Antonio Hart、Dick Oatts、Miguel Zenonなど、多くのアルト奏者に師事。卒業後は、更にJazzを深く学ぶために、The City College of New YorkのGraduate Programへと進む。
Rich Perry、Loren Stillman、アンサンブルをJohn Patitucciの各氏に師事。MAを取得後、NYの様々なシーンで演奏し研鑽を積む。
2012年帰国。
ライナーノーツ
"We don't know yet"
私にとってこのCDは、記念すべき第一歩です。
長年を過ごしたニューヨークから日本に帰国するにあたり、これからの自分の未来への期待と不安を抱えながらのレコーディングでした。ここから自分がどう成長し、どこまでゆけるのか、We don't know yetです。
1. Dark Side of the Force
言わずと知れた名映画中の言葉です。この曲のリハーサル中に、DrummerのPaoloが、"This song reminds me of the theme."と。あの黒いマスクのテーマです。言われなければ全く気付きませんが、言われてみると、そうとしか聞こえなくなってしまう。一体どの部分なのか、じっくり聞いてみてください。
2. I Don't Know Yet
私の曲は、大抵タイトルは後でつけます。そのため、出来上がったほとんどの曲名は"untitled"。この曲は、メンバーに「タイトルは?」と何度も聞かれて、答えた言葉がそのままタイトルになりました。5度の音程にこだわって書き上げました。
3. First Snow
初めて作った曲です。雪の降る季節に書きました。ニューヨークの地下鉄の駅には、地上2階くらいの高さに建てられているものも多くあり、私の住んでいたアパートの最寄り駅も、高架の上にある吹きさらしの駅でした。雪は上から降るものですが、着地しかけた雪が線路の下から吹き上げる風に乗ってまた舞い上がっていくのを見るのがとても好きでした。
4. Awakened Dreamer
小さい頃から、本を読むのが好きで、ファンタジーの世界に憧れていました。大人になった今でも、すばらしい本や映画を見た後には、その世界からなかなか現実に戻れません。
霧で煙った森の中で主人公が何かを探している、そんな場面から始まる物語をイメージして書きました、私なりのファンタジー小説でしょうか。
5. Bridges
"minor major7th"というコードがあります。実に個性的な響きの和音で、この和音をうまく使った名曲もいくつかあります。この和音にこだわり、チャレンジのつもりで書いた曲ですが、メロディーが流れていくにつれ、当初の目的とはまた違った曲に仕上がりました。
6. Isotope
Joe Hendersonの名曲をある曲と合体させてみました。不思議な事に、2つのメロディーのリズムが自然に重なり、特に手を加える事もなくサクサクとアレンジが進みました。
7. Yama
Bruce Barth氏の曲。日本の山々の雄大な光景が目に浮かぶようです。Bruceも、山のようなおおらかな優しさを持つ、すばらしい人物です。彼に出会えて本当に良かったという感謝の気持ちを込めて演奏しました。
Design
北川 正 (Kitagawa Design Office) http://kitagawadesignoffice.blogspot.jp/
CDレビュー
Jazz Page http://www.jazzpage.net/
ウィー・ドント・ノウ・イエット / 三浦裕美
女性サックス奏者でまたまた有望な新人が登場した。長年活動してきたニューヨークから帰国するにあたり現地の仲間とレコーディングを行った三浦裕美のデビュー・アルバム。自身のオリジナルを中心とした選曲で、若さ溢れる知的で抒情的なサウンドで惹きつける。三浦はアルトとソプラノを演奏しているが、アルトは、甘美なトーンで抑制の効いたアドリブを聴かせる。ソプラノも3曲で演奏しており、"Awakened Dreamer"などでの木管らしい軟らかい音はアルトの高音と区別が難しいくらいだ。作編曲の才能も豊かで、浮遊感をたたえた"Dark Side of the Force"、憂いをたたえた"First Snow"など心に響くメロディー。ベース・パターンやギターやピアノによるバッキングなどセンスのよいアレンジも細部に施されている。アコースティックでハートウォームなサウンドが心地よい。会心作。
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